出向者のPE課税は中国では既に一般的な問題ですが、タイにおいても認識が必要になって来ているようです。
日タイ租税条約(所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とタイとの間の条約)において、PE(恒久的施設)の定義がなされていますが、その一つに次のような条文があります。

  • 一方の締約国の企業が他方の締約国内において使用人その他の職員を通じて役務の提供(コンサルタントの役務の提供を含む。)を行う場合には、このような活動が単一のプロジェクト又は複数の関連プロジェクトについて12箇月の間に合計6箇月を超える期間行われるときに限り、当該企業は、当該他方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされる。

このままではわかりにくいので、具体的に国名を入れると次のようになります。

  • 日本企業がタイ国内において使用人その他の職員を通じて役務の提供(コンサルタントの役務の提供を含む。)を行う場合には、このような活動が単一のプロジェクト又は複数の関連プロジェクトについて12箇月の間に合計6箇月を超える期間行われるときに限り、当該日本企業は、当該タイ国内に「恒久的施設」を有するものとされる。

そして、日本企業がタイ国内にPEを有する場合、ごく簡単に言うと、日本企業の利得のうち当該PEに帰せられる部分に対してのみ、タイにおいて租税を課することができる、と定められています。

さて、問題の出向者のPE課税ですが、上記に照らして「出向者の報酬」に対するタイ国税局の判断は、きわめて大雑把ですが次のようになります。

  1. 出向者が完全に出向先であるタイ企業の支配下にあって、出向元とは何ら関係が無いと判断される場合、すなわち、出向者が単なるタイ企業の従業員であると判断される場合、出向者は日本企業のPEではないので日本企業に対する課税は発生しません(出向者は個人所得税のみ源泉徴収される)。
  2. 出向者が、出向元である日本企業の命令に基づいて、出向先であるタイ企業に対して、1年以内に半年以上役務の提供を行っていると判断される場合、出向者がPE認定される可能性が出て来ます。
    この場合、日本企業はPEを通じて役務提供を行っていることになりますので、出向者が受け取る報酬は、日本企業の利得とみなされ課税されます(出向者の個人所得税も課税される)。

PE課税がなされた場合は、タイ企業は日本企業に課されるべき源泉徴収税5%(国税局命令トーポー4/2528第12項による)、およびタイ国内でのサービス提供によるVAT(付加価値税)7%を納税しなければなりません。
これは日本企業へ立替金として請求し、日本企業は確定申告において外国税額控除申請をすることになります。

この問題は、出向契約書上に役務の提供が明記されている場合はもちろん、出向者の報酬をタイと日本とで分割支給していたりタイ日間で報酬に関する請求関係があったりすることが経理書類上明らかにわかる場合に指摘されやすくなります。
公認会計士と相談の上、出向契約書の確認など、対策を取っておくことをお勧めします。

尚、出向者が明らかにPEである場合は、日本企業がタイの納税者番号を取得し納税を行えば、タイ企業の納税は発生しません。

このコーナーでは、タイでの経営実務に影響する最新情報を簡易的に提供しています。
法令の適用条件は各企業を取り巻く様々な環境によって異なる場合があり、また法律の改正や新しい勅令・省令・告示等が予定されている場合もありますので、自社への影響や対応は必ず弁護士・公認会計士等の専門家とご検討ください。
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