タイの非公開株式会社の株主総会における議決権は、民商法典第3巻第22編第4章「株式会社」で定められており、附属定款に別段の定めがない限り、次のようになっています。
議決方法 | 議決権 | |
---|---|---|
原則 | 挙手 | 総会に自ら出席した株主(または文書により委任された代理人)はそれぞれ一票を有する |
挙手の結果が発表される前に、少なくとも二人の株主が秘密投票を要求した場合 | 秘密投票 | 各株主は自己が所有する株式一に対して一票を有する |
票数が同数であった場合 | 挙手 秘密投票 |
総会の議長が決定票を投じる |
内容は読んで字の如しで、秘密投票の要求がなされなければ、各株主の所有する株式数に関係なく、原則挙手で議決が行われます。
つまり、出席した株主(または代理人)の人数で決まるということです。
例えば、60%の株式を所有している株主Aと、20%ずつの株式を所有している株主B,Cが出席していた場合、Aが賛成してもB,Cが反対すれば否決されます。
Aだけでは秘密投票を要求することもできませんので、たとえ過半数の株式を所有していても、それを最低2人(社)に分散しておかないと意味がなくなります。
総会の議長も無視できない存在です。
例えば、50%の株式を所有している株主Aと、25%ずつの株式を所有している株主B,Cが出席して秘密投票を行い、Aが賛成して,B,Cが反対した場合は、票数が同数ですので総会の議長が決定票を投じることになります。
取締役会の議長が原則株主総会の議長となりますが、取締役会の議長は株主である必要はありませんので、株主でない人間が、株主総会のキャスティングボートを握るということもあり得ます。
以上のように、「附属定款に別段の定めがない」と、法人支配は極めて不安定な状態または制御不能な状態になってしまいます。
従いまして、タイで法人を設立する際には、次のような事項を検討し、将来に渡って問題ないように適切に附属定款で定めることが重要です。
附属定款の変更は「特別決議」事項ですので、一度登記してしまうと、株主総会で75%以上の賛成票が無いと変更できません。
- 株主総会の議決方法は「挙手ではなく、株式一に対して一票」と定める(必須)。
- 「株式の移転は、株主総会の了承が必要」と定め、株式の分散を防ぐ(ただし正当な相続は防げない)。
- 「普通決議は(過半数ではなく)○%以上の賛成をもって議決する」と定め、票が同数の場合に議決できないようにする(ただし、株式の配分によってはデッドロックに陥る可能性あり)。
- 優先株を発行(設立時と増資時のみ可能)し、優先株の議決権を普通株よりも小さくする(議決権無しにはできない)。
- 一定の株数を所有していないと総会での投票ができないと定める(ただし一定の株数未満の株主は委任投票が可能)。