タイの個人所得税について(現地採用向け)

今回は、タイの個人所得税について。

タイで行う労働で報酬を得る場合、または年間を通じて(1月1日から12月31日の間で)180日を超えてタイに滞在する場合は、タイの個人所得税対象となります。

タイでは国民総背番号制が敷かれており、納税の際にはIDカードが必要になります。
これは私たち外国人も同様で、タイで最初に納税する前に、会社が税務署に申告し、個人別のTAX I.D. CARDというものを取得します。
外国人はワークパーミット(就労許可)に記載されている会社かつ記載就労場所でしか働くことができないため、通常このカードは会社の管理部門が保管しています。
ですので、タイで働いていてもこのカードの存在を知らない人も多いかもしれません。

このTAX I.D.は一生有効です。
タイ国内で転職する際は、退職時に会社から返却してもらい、次の会社に提出することになります。

←TAX I.D. CARD

タイの納税方法は日本と同様で、会社員の場合は給与からの源泉徴収により会社が納税を代行します。
日本と大きく違うのは納税額の計算方法で、日本では毎月給与額に応じて仮に税金を納め、年収に応じた正しい納税額は年末調整を行いますが、タイでは毎月年収の予測を立てて、その予測年収に対する税額から納税済みの税額を差し引いた金額を残りの月数で割った金額をその月の税額とします。
つまり、タイでは年末ではなく毎月末調整を行っていることになります。
給与しか所得が無い私たち外国人の場合は、12月の納税時点で正しい納税額になっているはずですので、基本的に年末調整はありません。
ただし、確定申告は全員行わなければならないので、年間税額と納税済み額を差額0として申告します。

※年の途中で給与額が下がった場合、あるいは退職した場合は、払い過ぎの税金が発生する可能性がありますが、その際は確定申告で還付請求を行うことになります。

さて、タイの税率は、年収に応じて次のように定められています。

10万バーツまでの部分にかかる税率は5%
10万バーツを超えて50万バーツまでの部分にかかる税率は10%
50万バーツを超えて100万バーツまでの部分にかかる税率は20%
100万バーツを超えて400万バーツまでの部分にかかる税率は30%
400万バーツを超える部分にかかる税率は37%

正確には、所得税は全所得に対してではなく課税所得に対して課せられます。
課税所得とは、年間所得から、社会保険料本人負担分、経費控除、本人控除、配偶者控除、子供控除、生命保険料控除などの諸控除を差し引いた金額です。

これら諸控除の中で、全ての人が対象になるのは、社会保険料本人負担分、経費控除、本人控除です。

社会保険料本人負担分月額750バーツ×12ヶ月=9,000バーツ(年間を通じて月額所得が15,000バーツ以上の場合)
経費控除60,000バーツ
本人控除30,000バーツ
この場合、控除額の合計は99,000バーツです。

2011年7月現在、勅令により15万バーツまでは非課税措置が実施されていますので、これらの控除に15万バーツを加えると、実質的には、年間249,000バーツまでの所得には所得税がかからないということになります。

さて、実際に税金の計算をしてみましょう。

年間の平均月給30,000バーツ、通勤手当月額1,470バーツ、ウェルカム手当21,000バーツ、ボーナス6手当2回分16,000バーツの場合の年間税額の計算は次のようになります。

まず、年間所得は、(30,000+1,470)×12+21,000+16,000ですので、414,640バーツですね。
そこから控除額99,000バーツを差し引くと、課税所得は315,640バーツとなり、年間税額は次のように計算します。

まず、この315,640バーツのうち、現在15万バーツまでの部分は非課税なので、この部分の税額は0バーツです。
次に、10万バーツを超えて50万バーツまでの部分にかかる税率は10%なので、315,640バーツから、既に税額を計算した15万バーツを差し引いた、165,640バーツに対する税額は、165,640バーツ☓10%で16,564バーツとなります。
0バーツ+16,564バーツ=16,564バーツ
すなわちこれが年間税額になります。

しかし、これは年収が確定してから計算していますので話が簡単ですが、タイの納税方法は上記のとおり月末調整ですので、毎月の税金計算はもっと複雑です。

年収が確定していない時点でどうやって税額を決めるのかというと、まず「今月までの所得」+「来月以降の予想所得」=「予想年収」、とみなします。
来月以降の予想所得は、「今月の所得」×「12月までの残り月数」です。
所得額が変われば、当然予想年収も予想年間税額も変わりますので、その月に計算した予想年間税額から「前月までに納めた所得税を引いた金額」を残り月数で割った金額が今月の税額となります。

例えば、次のようになっていたとしましょう。

1月~3月は月給28,500バーツ
4月~6月は月給29,500バーツ
7月~9月は月給30,500バーツ
10月~12月は月給31,500バーツ
4月にウェルカム手当21,000バーツと、ボーナス6手当の8,000バーツ支給。
10月に2回目のボーナス6手当の8,000バーツ支給

まず1月の時点では昇給や一時金の額は確定していないので、予想年収は(28,500+1,470)×12=359,640バーツとなり、年税額は11,064バーツと計算されます。
それを12ヶ月で割った922バーツが1月の納税額です。
2月と3月は、予想年収が変わらないので、予想年間税額も変わりません。
すなわち2月の税額は、(11,064-922)÷11=922バーツとなります。
3月の税額も同様に、(11,064-922-922)÷10=922バーツとなります。

4月は昇給と一時金の支給がありますので、ここで予想年収が大きく変わります。
当然予想年間税額もそれに応じて再計算が必要になります。
まず、予想年収は(28,500+1,470)×3+21,000+8,000+(29,500+1,470)×9=397,640バーツとなりますので、予想年間税額は14,864バーツとなります。

4月の税額は、(14,864-922-922-922)÷9≒1344.25バーツです。

マスターできましたか?
同様に計算して行くと、5月以降の税額は、5月1,344.25バーツ、6月1,344.25バーツ、7月1,444.25バーツ、8月1,444.25バーツ、9月1,444.25バーツ、10月1,811.00バーツ、11月1,810.75バーツ、12月1,810.75バーツとなります。
さて、1月から12月までの税額を合計してみましょう。
922.00+922.00+922.00+1,344.25+1,344.25+1,344.25+1,444.25+1,444.25+1,444.25+1,811.00+1,810.75+1,810.75=16,564.00バーツ!
実際の年間所得に対する税額とぴったり一致しますね。
当たり前のことですが、面白いと思いませんか?



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