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タイで日本人コールセンターが実現するまで

インタビュー

佐藤大輔(さとうだいすけ)
1968年生まれ。立教大学社会学部観光学科卒。日本アセアンセンター公認タイスペシャリスト(アセアン検定シリーズ第1回タイ検定3級1位、第2回タイ検定2級1位、国際知識普及協会タイ検定1級認定)

――日本語コールセンターを行うために、タイ政府認可を取得したのが2003年とのことですが、そもそもタイではコールセンターを行うのに認可が必要なのでしょうか。

タイ人が行う場合、認可は必要ありません。自由にできます。
しかし、タイではほとんどのサービス業が外国人事業法で規制されており、コールセンターも例外ではなく、外国人には認められていません。
外国人事業法におけるタイ人とは、タイ国籍の自然人としてのタイ人、またはタイ人が過半数の株式を所有するタイ法人、またはこのようなタイ法人が過半数の株式を所有するタイ法人のことで、それ以外は外国人(企業)となります。

――ということは、タイ人が過半数の株式を所有する合弁形式であれば認可は必要なく、その合弁会社は外国資本が入っていてもコールセンター事業に参入できるということですね?

その通りです。
実際に、三井物産系のMitsiam Tele-services社はこの方式でタイ国内向けタイ語コールセンターを行っていましたし、その後資本構成を変更してMOCAP社となり現在500人規模のタイ語コールセンターに発展しています。
詳細はわかりませんが、三井物産はMitsiam International社というタイ法人を支配しており、このMitsiam International社と他の地場企業とで合計51%以上の株式を保有することにより、タイ国内でのサービス業を可能にしています。
ただし、これは日本人が働けることを意味するものではありませんので、日本向けサービスを行おうとすると問題が発生します。
日本向けサービスでは、当然日本語対応が必要となりますが、ネイティブ日本人と同等の日本語会話力を持つタイ人は極めて限られておリ、日本国内よりも人件費が高額となるため、日本語を話すタイ人ではなく、日本人の雇用が不可欠です。
そうすると今度は外国人雇用規則にひっかかります。

――外国人雇用規則とはどのようなものでしょうか?

企業が外国人を雇う際の規則で、入国管理局により、外国人の就労ビザ取得には、1名につき200万バーツの資本金と4名以上のタイ人雇用が必要で、最低月給が日本人の場合5万バーツ(当時は6万バーツ)、かつ1企業につき外国人は10名以内と定められています。

――すると、タイで日本向けの大規模コールセンターサービスはあり得ないということになりますが。

当初相談したタイ人弁護士からもはっきりと力を込めて「絶対にあり得ない!」と言われました(笑)。

――相談の時点で断念していたら、現在のタイの日本語コールセンター産業は存在していなかったわけですね?

はい、おそらく。
ただ、2001年当時、私は10年間近くビジネスやレジャーで日本とタイとを往き来していたのですが、その中で、タイで働きたいという若者が確実に1万人以上存在していることはわかっていましたし、ネットワーク技術面でオフショアコールセンターが可能であることはインドやフィリピンが既に証明していましたので、タイの法律さえクリアできれば、ビジネスの成功は間違い無いと考えていました。

――そのタイの法律をクリアする秘策がBOIにあったわけですが、まずBOIとは何でしょうか。

BOIは投資委員会(Board of Investment)の略称で、工業省管轄(のちに内閣府管轄)の政府機関です。 事業者や個人に対し様々な恩典を用意することで、タイ国内外からの投資を奨励する役割を担っています。
タイは昔から、外国投資を広く受け入れることで経済発展を遂げてきましたが、一方で国内産業や国民も保護しなければならず、時として法律と政府方針とが衝突することがあります。
これを乗り越えるために施行されたのが投資奨励法です。
国内への悪影響を最小限に抑えながら、既存の法体系では禁止されている業種を可能にしたり優遇措置を行うなどして投資を奨励するための法律で、その奨励業種を定めたり、恩典申請審査を行なったりする機関がBOIです。
大規模な日本語コールセンターを可能にするには、外国人事業法と外国人雇用規則を乗り越える必要がありますので、このBOIに着目しました。
普通の企業は、外国人の土地所有や税制恩典を重要視すると思いますが、私は「BOIが必要と認める外国人専門家のタイ入国・滞在および労働を許可する」という恩典に非常に心惹かれました。

――申請に当たり障害はありましたか?

はい、実はここからが大変でした。
BOIの投資奨励業種は、農業、電子産業、サービス業など当時7類に分類されていたのですが、コールセンターはそのどれにも記載がなく、当然のことながら申請書すらいただくことができませんでした。
過去に日本語コールセンターが存在していなかった理由がここにあります。
しかし、BOIの資料をもう一度良く調べてみると、投資奨励業種は、時代背景に合わせ追加削除や分離統合が行われていることを発見しました。
そこで、コールセンターをまずサービス業の投資奨励業種に追加してもらおうと考えたのです。

――具体的な策はありましたか?

地道な説得です(笑)。
まず、サービス業を管轄する第7課の担当課長にターゲットを絞って、オフショアコールセンターの仕組みや日本のアウトソーシング事情を説明しました。
また、外国でのオフショアコールセンター成功例を集めてはタイ語に翻訳して繰り返し提出し、第7課の検討課題に乗せていただくことができました。
日本から通ったので、ここまででほぼ1年かかりましたが、さらに、日本語コールセンターは高度な日本語コミュニケーション能力が必要なため日本人だというだけでできるような簡単な仕事ではなく、タイ人の雇用を奪うことが絶対に無いこと、また、外貨を獲得する手段として、日本語コールセンターは全く資源を必要としない「サービスの輸出」という新しいコンセプトの産業であることを力説して、当時のBOI事務局長を引っ張り出すことに成功しました。
そして、「コールセンター事業奨励可能性検討のための公聴会」を開いてもらうことに漕ぎ着けたのです。

――公聴会はどのような形式で開催されたのですか?

公聴会は2002年9月16日、BOI本部第一会議室において行われました。
タイ側のメンバーは、BOI関係部署、商務省関係部署、国立大学教授、国内コールセンター最大手、TOT(国営国内電話会社)、CATテレコム(国営国際電話会社)、外資系コングロマリット数社で、日本側メンバーは、私とコンサルタント兼通訳の他にJETROバンコックセンターが招かれました。
まずBOI事務局長が公聴会の趣旨を説明し、それを受けて私がプレゼンテーションを行い、その後参加メンバーから自由に意見を求めるという流れで進行しましたが、幸い反対意見は出ませんでした。

――感触は良かったということですか?

はい。
政府系部署からはタイ語市場は保護すべきだという意見が、企業側からは、新規奨励する場合は、現在輸入に頼っているコールセンター機器の関税を下げて欲しいという意見が出ましたが、どちらも私の目的には影響しませんので、これは行ける! と思いました。
このあと日本に戻り吉報を待っていたところ、10月30日の投資委員会本会議でコールセンターを新規奨励業種に加えることが正式決定し、11月11日『BOIは新しい投資奨励に開国し、「コールセンター」業務の推進で国への歳入を創造する』という告示が発表されました。
告示の内容は、外国語コールセンターにはネイティブ外国人が必要である旨の説明と、「税制恩典無し」また「タイ語サービスが行えるのはタイ人企業のみ」という条件付きで恩典を与えるというもので、すでに国内で事業を推進しているタイ人企業とは競合しないように配慮されていました。

――やっと恩典申請ができることになりました。

はい。
すぐにコールセンターブース100席202名の外国人雇用の申請を行い、翌2003年3月18日にコールセンター第1号の投資奨励恩典を無事に受けることができました。
BOIに通い始めてから約2年間が過ぎましたが、これでタイでの日本人大量雇用の道が開けたわけです。

――外国人事業法が施行されてから初めてのことでしょうか。

外国人事業法は1972年の革命団布告を原点を持つ比較的新しい法律なのですが、もしかしたら、アユタヤー時代に山田長政が活躍したとされる日本人傭兵チーム以来初めての日本人大量雇用かもしれません。

――そして、現在タイの日本語コールセンター産業の隆盛があるわけですね。本日はありがとうございました。

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